私たちは150年にわたってキーボードで文字を打ってきました。その間にキーボードは機械に言葉を入力する当たり前の手段になり、タイピングの速さは測るもの、練習するもの、履歴書に書くものになりました。話すことには練習がいりませんし、話すほうがずっと速いままでした。このガイドでは、人が話す・読む・打つ速さについての信頼できる公開研究をまとめ、公表されている数字がなぜ食い違うのかを説明し、2分で自分のペースを測る方法を紹介します。
すぐに結論を知りたい方へ: 英語を話す人の多くは、1分間に約150〜200語(wpm)の速さで話します。ペンシルベニア大学が数千件の電話の会話を分析した研究では、間の数え方によって164〜196 wpmという結果でした。大人が文章を音読する速さは約183 wpmです。タイピングはずっと遅く、キーボードで約52 wpm、タッチスクリーンでは約36 wpmです。
この記事の数値はすべて英語についてのものです。日本語の話す速さは、単語ではなく1分あたりの文字数やモーラ数で測るのが一般的なため、ここでの数字をそのまま日本語に当てはめることはできません。
以下の研究の数値は、査読付きの研究と、公開されている専門職の基準1つに基づいており、それぞれ該当箇所に出典のリンクを付けています。
話す・読む・打つ速さの早見表
行為 | 典型的な速さ | 出典 |
|---|---|---|
会話(発話ごとに計測) | 164 wpm | Yuan, Liberman, Cieri(2006) |
会話(間を含む通話全体) | 196 wpm | Yuan, Liberman, Cieri(2006) |
会話(無音部分を除外) | 236 wpm | Yuan, Liberman, Cieri(2006) |
音読 | 183 wpm | Brysbaert(2019) |
黙読(ノンフィクション) | 238 wpm | Brysbaert(2019) |
黙読(フィクション) | 260 wpm | Brysbaert(2019) |
認定速記者が書き取るべき証言 | 225 wpm | NCRAの実技試験 |
スマートフォンで短いメッセージを音声入力(修正込み) | 153 wpm | Ruan et al.(2017) |
同じメッセージをスマートフォンのキーボードで入力 | 52 wpm | Ruan et al.(2017) |
パソコンのキーボードでタイピング | 52 wpm | Dhakal et al.(2018) |
モバイル端末のタッチスクリーンでタイピング(37,370人) | 36 wpm | Palin et al.(2019) |
人は1分間に何語話す?
最も丁寧な計測は、文章を読み上げてもらうのではなく、実際の会話の時間を測る音声研究者によるものです。ペンシルベニア大学Linguistic Data ConsortiumのJiahong Yuan、Mark Liberman、Christopher Cieriは、英語と中国語で録音された大量の電話の会話を分析しました(Interspeech 2006)。初対面の2人が指定されたテーマについて話す英語のSwitchboardコーパスでは、同じ通話でも時間の数え方によって3つの異なる速さが出ました。
- 196 wpm:2人が話したすべての語数を通話の長さで割った場合。通話ごとには111〜291 wpmの幅がありました。
- 236 wpm:無音や雑音を除き、話している時間だけを測った場合。幅は158〜312 wpmでした。
- 164 wpm:一人ひとりの発話の時間を別々に測って合計した場合。発話の区切りが大きく重なり合うため、合計時間が通話そのものより長くなり、速さが低く出ます。
この幅こそが、この質問への答えが食い違う理由です。よく引用される「1分間に150語」という数字は、これらの計測値の中央ではなく、遅い側の端にあたります。
同じ研究では、話す速さは状況によって変わることもわかりました。
- 話す相手。 友人や家族との通話は214 wpmで、初対面同士の通話の193 wpmより約10%速くなりました。
- 話題。 指定されたテーマ別の平均は、152 wpmから170 wpm近くまでの幅がありました。
- 年齢。 年齢が高い話者ほど、ゆっくり話す傾向がありました。
- 性別。 男性のほうが女性よりわずかに速く、その差は1分あたり約4〜5語(2%)でした。
- 発話の長さ。 ごく短い発話は1語あたりが遅くなります。7語程度までは発話が長くなるにつれて速さが急に上がり、中程度の長さではほぼ横ばいになり、長い発話では再び少しずつ上がります。
プロの速記者も、会話並みの速さで試験を受けます。全米法廷速記者協会(NCRA)のRegistered Professional Reporter資格を取るには、225 wpmで読み上げられる証言を95%の正確さで書き取らなければなりません(NCRA)。
台本の音読も同じ範囲に収まります。Marc Brysbaertによる2019年のレビューは、77件の研究と5,965人の参加者をもとに、大人の音読の平均を183 wpmとしています(Journal of Memory and Language)。
キーボードとスマートフォンの平均タイピング速度
タイピングについては、フィンランドのアールト大学が主導した2つの大規模なオンライン研究が最もよくわかる資料です。1つ目は2018年の研究で、オンラインのタイピングテストで文章を書き写した168,960人のボランティアから、1億3,600万回のキー入力を集めました(Dhakal et al., CHI 2018)。
- 平均は51.56 wpm(標準偏差20.2)でした。
- 上位10%は約78 wpmを超え、下位10%は約26 wpm未満でした。最も速い人は120 wpm以上に達しました。
- タイピングの講座を受けたことがある人は、受けたことがない人より約5 wpm速いだけでした。
2つ目は2019年の研究で、37,370人のボランティアにモバイル端末のタッチスクリーンで同じ作業をしてもらったところ、平均は36.2 wpmで、修正されずに残った誤りは2.3%でした(Palin et al., MobileHCI 2019)。約74%が両手の親指で入力しており、片手の親指や1本の指で入力するより速くなりました。また、自動修正を使う人ほど速く、予測候補のバーから単語を選ぶ人ほど遅い傾向がありました。
どちらの研究にも注意点が2つあります。参加者は自らタイピングテストを受けに来た人たちなので、無作為に選ばれた集団ではありません。また、どちらのテストも画面に表示された文章を書き写す「転記」の速さを測ったものです。自分の言葉で書く場合は、タイピングでも話す場合でも考える時間が加わります。多くの記事で引用される40 wpmという数字は、私たちのホームページのものも含めて、タッチスクリーンとキーボードの平均のあいだに位置します。
話すほうがタイピングより速い?
はい。最も直接的な比較研究によれば、スマートフォンでは約3倍速くなります。スタンフォード大学、ワシントン大学、Baiduの研究者は、英語を母語とする24人と中国語(標準語)を母語とする24人に、iPhone 6 Plusで短いフレーズを入力してもらいました。1回はiOS標準のキーボードで、もう1回はBaiduの音声認識Deep Speech 2に話しかけ、誤りはその都度修正してもらいました(Ruan et al., 2017)。
- 英語: 音声は153 wpm、キーボードは52 wpmで、2.93倍の速さでした。
- 中国語: 123 wpm対43 wpmで、2.87倍の速さでした。
- 誤り: 入力の途中で生じた誤りは音声のほうが少なかった(修正された誤りの率は5.30%対11.22%)一方、最終的なテキストに残った誤りは音声のほうがわずかに多くなりました(1.30%対0.79%)。
著者たちは限界もはっきり書いています。参加者は静かな部屋に座って短いフレーズを書き写しており、これはそれぞれの方法の上限の性能を測るための設定です。また、キーボードで考えながら書くほうが、声に出して考えながら書くより思考の妨げになりにくいという議論があることにも触れています。とはいえ、音声の結果には認識の誤りを直す時間も含まれていて、それでも約3倍速かったのです。
パソコンでも計算は同じようなものです。164〜196 wpmの会話の速さは、52 wpmのタイピングのおよそ3〜4倍です。私たちのホームページでは、Aquaでの最大230 wpmの音声入力と40 wpmのタイピングを比べて5倍としていますが、どちらも私たち自身の数字であり、これらの研究の結果ではありません。
読む速さと話す速さ
人は話すより速く読みますが、よく言われる300 wpmほど速くはありません。Brysbaertのメタ分析は、190件の研究と18,573人の参加者をもとに、英語を読む大人の黙読の平均をノンフィクションで238 wpm、フィクションで260 wpmとし、ノンフィクションではほとんどの大人が175〜300 wpmの範囲に収まるとしています。音読の平均は183 wpmです。
つまり、一連の流れの中で最も遅いのはタイピングです。読み手はノンフィクションを約238 wpmで読み取ります。これは会話より少し速く、平均的なタイピングの約4.5倍の速さです。
5分間のスピーチは何語?
自分のペースにスピーチの長さ(分)を掛けます。話す速さは人によって違うため、下の表では計画用の3つのペースを示します。自分のペースの測り方は次のセクションで紹介します。
長さ | 130 wpmの場合 | 150 wpmの場合 | 180 wpmの場合 |
|---|---|---|---|
1分 | 130語 | 150語 | 180語 |
3分 | 390語 | 450語 | 540語 |
5分 | 650語 | 750語 | 900語 |
10分 | 1,300語 | 1,500語 | 1,800語 |
20分 | 2,600語 | 3,000語 | 3,600語 |
逆に計算すると、1,000語の原稿は130 wpmで約7.7分、150 wpmで約6.7分、180 wpmで約5.6分かかります。間や笑い、質問のための時間も残しておきましょう。
自分の話す速さを測る方法
いちばん簡単な方法は、そのまま音声入力のテストにもなります。タイピングを減らしたい人にとっては、これこそが大事な数字です。
- 空の文書を開きます。 Googleドキュメント、Word、メモアプリなど何でもかまいません。
- 音声入力を始めます。 Macではマイクキーか音声入力のショートカットを押します(方法)。WindowsではWindowsキー + Hを押します(ガイド)。スマートフォンではキーボードのマイクをタップします(iPhone、Android)。
- 2分間話します。 仕事やその週の出来事など、よく知っていることについて話しましょう。間違いを直すために止まらず、話し続けます。
- 語数を数えます。 Googleドキュメントでは、「ツール」から「文字カウント」を選びます(Googleのヘルプページ)。メニュー名は英語版のヘルプから訳したもので、日本語の画面表示とは異なる場合があります。ほとんどのエディタに同様のカウンターがあります。日本語で話した場合は、語数ではなく文字数で数えることになります。
- 分数で割ります。 2分間で340語なら170 wpmです。
- キーボードでも同じことをします。 同じテーマについて2分間タイピングし、もう一度数えます。どちらも考える時間を含むので、公平な比較になります。
原稿を読む速さを測りたい場合は、声に出して読んだものを録音し、原稿の語数を所要時間で割ります。
話す速さがいま、より重要になっている理由
コンピューターの歴史の大半では、この差はさほど気になりませんでした。メールは短く、文書は書き起こすより手直しすることのほうが多く、読み手は行間を補ってくれる人間でした。AIツールがその前提を変えました。コーディングエージェントやアシスタントへの良いプロンプトとは、やりたいこと、試したこと、避けたいことをまとめた、ひとまとまりの文脈です。52 wpmではその段落を書くのが面倒になり、1行だけ送って一般的な答えが返ってくることになります。話す速さなら、同じ段落も数秒で済みます。だからこそ、声はAIエージェントとのコーディングやClaude Codeでの作業の自然な手段になりつつあります。
ただし、速さが役に立つのは言葉が正しく出てくる場合だけです。音声入力の速さの強みを削る要因は3つあります。
- 修正。 聞き間違いが1つあるたびに、キーボードに戻ることになります。
- 名前や専門用語。 あなたの製品名を一度も見たことのない汎用の音声認識は、それを間違え、その後も同じように間違え続けます。
- 後片付け。 そのままの書き起こしには「えー」や言い直しがすべて残るため、速く書けた下書きでも手直しに時間がかかります。
Aqua Voiceで話す速さのまま音声入力する
私たちはAqua Voiceを開発しているので、このセクションはその点を踏まえてお読みください。Aquaは、パソコンやスマートフォンのあらゆるアプリに文字を入力できる音声入力アプリで、タイピングの速さではなく考える速さが限界になるように作られています。
- 速さについていく。 Aquaは最大230 wpmの音声入力についていけます。これは自社公表の数字で、このガイドで紹介した会話の平均を上回ります。文字は50ミリ秒未満で表示され始め、最終的なテキストは約450ミリ秒で確定します(こちらも自社公表)。
- 修正が少ない。 9to5Macの比較テストでは、同じ文章でMac内蔵の音声入力が17か所間違えたのに対し、Aquaの誤りは1か所でした(1つの文章、1人の話者による比較です)。Aquaは自社開発の音声モデルAvalonで動いており、Avalonは2025年10月のデビュー時点でOpenASRリーダーボードのプロプライエタリモデル1位でした。
- 一度登録すれば済む辞書。 名前、製品用語、専門用語を追加すれば、それ以降は正しく入力されます。
- 整ったテキストを、声で編集。 Aquaは句読点を自動で入れます。Edit Modeでは、文を選択してキーを押したまま、変更内容を話します。
- どこでもプッシュ・トゥ・トーク。 MacではFnキーを押したまま、WindowsではAquaのキーを押したまま話します。iPhoneではAquaキーボードに切り替えます。Android版Aqua Voiceでは、いつも使っているキーボードの上のボタンをタップします(リリース記事、Google Play)。
正直な制約もお伝えします。Aquaはクラウドで書き起こすため、インターネット接続が必要です。対応言語は49言語です。無料プランには1,000語が含まれ、クレジットカードは不要です。Proは年払いなら月額10米ドル、月払いなら12米ドルで、1つのサブスクリプションでMac、Windows、iPhone、Androidを利用できます(アプリストアでの請求額は異なる場合があります)。SOC 2 Type II監査報告書とISO 27001認証を取得しています。また、GDPRとHIPAAにも準拠しています。設定方法はガイドで、ほかの選択肢との比較はおすすめの音声入力ソフトのまとめでご覧いただけます。
よくある質問
話す速さの平均は1分間に何語ですか?
英語の会話では約150〜200 wpmです。Yuan、Liberman、Cieriによる電話の会話の研究では、発話ごとに測ると164 wpm、通話全体では196 wpmでした。音読の平均は約183 wpmです(Brysbaert、2019年)。
1分間に150語は速いですか、遅いですか?
会話としては、150 wpmはゆったりした部類です。ペンシルベニア大学の電話の会話の研究では、テーマ別の平均が152 wpmから170 wpm近くまで、通話全体の平均は193〜196 wpmでした。スピーチには唯一の正しいペースはないので、リハーサルの時間を測り、そこから調整しましょう。
平均的なタイピング速度は?
パソコンのキーボードで約52 wpm(Dhakal et al., 2018年の168,960人のボランティアで51.56 wpm)、モバイル端末のタッチスクリーンで約36 wpm(Palin et al., 2019年の37,370人のボランティアで36.2 wpm)です。よく引用される40 wpmは、その中間にあたります。
話すのはタイピングより何倍速いですか?
約3倍です。スタンフォード大学、ワシントン大学、Baiduの研究では、iPhoneでの音声入力はキーボードより2.93倍速く(153 wpm対52 wpm)、これには誤りを直す時間も含まれています。パソコンでは、164〜196 wpmの会話の速さは、52 wpmのタイピングのおよそ3〜4倍です。